理科室経営の基本的な考え方

よいと思ったことはすぐに実行する
 私がやっていることは,ほとんど他の学校,雑誌,本などから得たことを実行しているに過ぎません.ささいなことでも,実行するかしないかが積み重なり,大きな違いを生むことになると考えています.(当然ですが)
 私が第一にしていることは,生徒にとって,行くのが楽しくなる理科室です.行っても壁には掲示物が何もなく,実験する器具がどこにあるかもわからない,こんな部屋では生徒が理科室に魅力を感じることはないでしょう.行くと,授業が始まる前から掲示物を読んだり,展示物を見たり,遊んだりできる,こんな部屋なら生徒は先を争って行くはずです.実際に,私の理科室では,かなり実現できていると自負しています.理科室を見学した大人は,たいてい「わたしもこのような理科室で勉強したかった」とおっしゃいます.
 ただし,楽しいだけで理科室経営が済むわけではないのは当然です.
  機能的に整備されていること(生徒が使いやすくなっている)
   事故防止の配慮がしてあること(薬品の管理,器具の配置など)
が大前提です.それプラス楽しさなのです.
 では,どのように楽しさを提供したらよいか?
   ものを豊かにする.
  
情報を豊かにする.
この2つの方向から,力を入れてきました.
●ものを豊かにするには
 お金があればよいのですが,現実には十分にありません.そこで,ケチ精神を発揮するわけです.廃物をドンドン利用し,教材化していくのです.私にとって,ゴミ捨て場は,宝の山! VTRやパソコンが落ちている時代です.
 ただし,お金も必要.現金で,秋葉原や博物館,日曜大工店などで安く,いいものを買います.
 なお,糊,グラフ用紙,定規,電卓などは理科室に備えておき,どんどん使わせています.生徒がいちいちグラフ用紙を持ってこなくてもすむように,サービスしています.
 さらに付け加えると,道徳的な指導があります.いくらものがたくさん置いてあっても,とられてなくなったり,壊されてしまっては元も子もありません.「このようにたくさんの器具が出しっぱなしになっているのは,生徒と先生の信頼関係があるからだ」ということを機会あるごとに生徒に話しています.生徒はそれに答えて,「もっとよい理科室にして,今度くる新入生を驚かしてやろう」と書いてくれています.
 授業の中でも,理科の知識だけでなく,マナーや心(美しいものに感動する心,生命や宇宙の神秘などに対する畏敬)を重視しています.テストの点が悪くても決して怒らないけれど,後かたづけがいい加減であったり,他人に迷惑をかける行為,実験データのねつ造などに対しては厳しく指導しています.
 
情報を豊かにするには
 提示物,展示物は,情報を生徒に与えるものです.世の中,情報の洪水ですが,小・中学生の理科という観点からみたとき,それほど豊かな情報があるとは言えません.ぜひ,豊かな情報という観点から,掲示物や展示物を整えていきたい
ものです.
 また,情報提供のひとつとして,教科通信『かがく』を年間40〜50号ぐらい発行しています.内容は,
     ・授業に関連する話題
     ・授業の感想
     ・新聞や雑誌などの科学の話題
     ・科学番組や今月の星空の紹介  などです.