服につく種子

10月下旬になり,秋も深まりました.
植物は子孫を残すために,たくさんの種子を飛び散らしたりしています.
風に乗って遠くに飛んでいくもの,自分ではじけて飛び散るもの,とりに食べられフンといっしょに落としてもらうもの.実に,さまざまな種子があります.
その中で,「ひっつき虫」ともいい,遊びにも使われる種子は,人の服や動物の体にくっついて運んでもらうチャッカリものです.犬の散歩に出かけると,ズボンや犬の毛についていることもありますね.!
あなたは,何種類のひっつき虫を知っていますか?
ルーペをもって,探しに出かけましょう.

●用意するもの
 植物図鑑,ルーペ,双眼実体顕微鏡
※このページに載っている拡大写真は,双眼実体顕微鏡(ニコンSM-5 倍率20倍)で撮影したものです.
 デジカメで撮影したものを,トリミングしたりしています.
 ニコンからは,野外観察用の双眼実体顕微鏡「ネイチャースコープ・ファーブル」というの販売しています.
 (値段は5万円)

オナモミ(キク科)
1番有名なひっつき虫.投げ合ってよく遊びますね.
カバンやくつなどに使われている.マジックテープはオナモミの仲間(ゴボウ)の実がヒントになって生まれたのです.
じつは,この写真も含め,今,見かけるのは,メキシコからの帰化植物オオオナモミです.
葉っぱをもんでつけると虫さされに効くというので「生揉み(なもみ)」から名前が付いたといわれています.






双眼実体顕微鏡で見ると,かぎ針が立体的に見えます.


このかぎ針で服にひっかかるのです.


マジックテープ(正式には面テープ)を上から見たところ.


横から見たところ.かぎ針に似ていますね.
これはもともとループになっているのを,小さな刃でカットして作っています.
詳しくは,山根一眞『メタルカラーの時代6』(小学館)を参照して下さい.
マジックテープは,クラレの登録商標です.マジックテープのひみつ


マジックテープがくっついているところ.

イノコヅチ(ヒユ科)
「イノシシの子どもによくくっついているので,この名前がついた」と勝手に勘違いしていました.
「茎のふくらみを,イノシシの膝頭」に見立てて名付けたそうです.
漢字で書くと「猪の子槌」です.



まるで,虫が並んでいるような実(果実).


布についたところ

 
ひとつを拡大してみました.                          しっかりと繊維に刺さっています!


もう一度,もとの状態を横から見ると,こんなふうになっていました.

アメリカセンダングサ(キク科)
北アメリカ原産の帰化植物です.
これがついたら,やっかい.なかなか取れません.どうしてだか,ルーペでよく見てみましょう.





拡大してみると,キク科であることがわかります.マリーゴールドに似ています.


若い実を割ってみたところ.これも,マリーゴールドに似ています.

 
トゲの部分に,さらに小さな鋭いトゲが,びっしり!


熟した実は,このように開きます.

 

トゲの部分を拡大すると,

これが服に刺さったら,1つ1つ引き抜かないととれないはずです.

観察からの帰り道,黄色いコスモスが咲いていました.


この実をよく見てみると,さっき見たのに似ています!


布につけてみると,かろうじてひっかかりました.ひっつき虫というほどではありません.

そのほかのひっつき虫

チヂミザサ
 ネバネバした液を出してくっつきます.

ヌスビトハギ
 いま流にいえば,ドロボウハギ.実の形が泥棒がぬき足さし足で歩いたときの足跡に似ているので,この名前がつきました.花は名前と違って,赤くきれいに咲きます.

【参考になるサイト】
ひっつき虫 岡山理科大学 総合情報学部 生物地球システム学科 植物生態研究室