第3回法則化中学全国セミナー 2001年10月7日 チサンホテル札幌新館
※当日の発表資料に加筆してまとめたものである.(2002年5月12日)
中学生を理科好きにしよう! 小森栄治
向山洋一氏の理科授業
■あきるまで実物にふれさせる
「これが理科教育の根本である」……『教え方のプロ・向山洋一全集』8巻11ページ
「ものがなければ理科の授業ではない」 同上12ページ
※関連キーワード 自由試行
局面の限定
変化のあるくり返し
内部情報の蓄積・再構成
■単元を貫く1本の大きな柱を設定する
★教科書を音読させたり,赤鉛筆で線を引かせたりするのは,「向山型理科」ではない.
向山氏はそのような授業はしていないし,著作にもない.
知識の定着には有効な指導技術であるが,向山理科として書くべきではない.
★向山氏いわく,「実物にふれさせるのが理科です」
「気づく,理解する,わかる」を区別して使うようにしなくてはならない.
3つのうちのどれかで,授業形態が異なってくる.大きな構造が決まる.
それを定めて授業する.
・気づかせる……ものと時間を十分確保し,自由試行.その後発表させる.
【例】さまざまな磁石を用意し,たっぷりと時間をあたえる.そうするとNとSが引き合うことや,つよい磁石と弱い磁石だとNとNでもついてしまうことなど,さまざまなことに気づく.気づく内容はバラバラである.
・理解させる……1つの現象に対して異なる考えがでる.討論したり,実験したり,調査して1つに整理していく.
・わからせる……知らせることであり,教師の説明が必要である.
日本の中学理科が抱える問題点
■理科ぎらい
→理科を好きにするのも嫌いにするのも教師次第
■観察実験をしない授業(中学より,高校の方がはるかにひどい)
→理科ぎらいの原因の一つ.子どもは実験が好き.
■暗記にたよる学習
→高校入試問題も暗記再生タイプは少なくなっている.
どのような定期テストを作っているか.
ホームページ上で公開すると,生徒や塾関係者が見てしまうので,eグループの共有フォルダにのせておき,メーリングリストのメンバーだけが見るようにしたい.
★funではなく,interestingな授業を.知的な楽しさを!
子どもたちを理科好きに
■あきるまで実物にふれさせよう
→子どもたちはものをいじるのが大好き
→導入でふれたものが,単元の中でくり返し出てくるような展開を.
→どのようなものを用意するかで教師の力量がわかる.
■単元構成の工夫をしよう→単元のストーリーを考え,どこに力点を置くべきか考える.
■「これが科学だ」ということを伝えよう→知識だけでない.ものの見方や考え方を.
■日常生活や地球環境との関連を伝えよう→理科の学び甲斐を感じさせる.
■自然や科学,科学者・技術者のすばらしさを伝えよう
→教師が感動しなくて,生徒に感動を伝えられるか.理科人の気概を!
★進路とも関連し,企業名や科学者・技術者個人名を出して紹介しよう.
・宝酒造は,バイオ関連では日本のトップレベルの会社である.2001年2月15日号の『NATURE』ヒトゲノム特集の日本語版をつくり,無料配布した.
・宇宙飛行士の毛利衛さん 『科学』(岩波書店)2000年11月号より引用.当日は,要約して紹介しました.
「われわれ宇宙飛行士はシミュレーション訓練をコンピュータでたくさんやりますね.ギリギリ危険な状況を仮定してのシミュレーションですが,失敗しても生命の危険性はないのです.しかし,それだけでは本物にならないので,T38という2人乗りのジェット機の操縦をさせられます.整備不良で墜ちるかもしれないし,地面に突っ込むかもしれない.バードストライクといって,飛んでいる鳥が,コックピットのガラス窓を突き破ることもあります.毎回,そういうことをいわれて,生と死ということを意識して乗り込むわけです.油断すると,それが命取りになるということを経験させないと,シミュレーションだけでは最終的には本番に対応できません.」
→われわれも,ぬるま湯に使った授業ではなく,論文審査や模擬授業で向山先生に撃墜される緊張感を味あわないと,授業の技能は上がらない!
※この後は,当日いえなかった部分を,同書からもう一つ紹介します.
「日本にとって,もう一つの意義は,これも私だけがいっているんですけれども,人間が行くという,第二次世界大戦のあとあまりみえる形ではなかった,命を懸けて何かをするということにあります.生死を懸ける戦争というのは,生きているんだという意識を強烈に呼び覚まします.アメリカ社会で生活していると,隣の人がイラクでの戦争で死んでいるという人が現実にいます.死は,社会全体の平和を守るために必要なんだという意識を強烈にもっているんですね.」
★教科に対する教師の思い入れを生徒は感じる.
使いやすい理科室経営・理科教材の法則化
■使いやすい理科室には法則性がある.
→片々のコツの集大成 試験管一つにも使いやすい規格,管理の仕方がある.